2015年7月1日水曜日

20150630


 友人と食事をしていた時、突然次に話す言葉が思いつかなくなり、呂律が回らなくなり、あれっと思った次の瞬間頭がぐらりときてトイレに駆け込んだ。そしてドアを閉めた瞬間倒れた。幸い頭をぶつけることはなかった。
 どれくらいの時間そうしていたか分からないが、立たなくてはと思って何度か失敗し、ようやく座面に腰を下ろした。頭から血が引いていくのを感じた。息ができない。あいにく今日はワンピースを着ている、苦しい、下着の金具を外したら楽になるだろうかと考えたが思うように体が動かない。心当たりは何もなかった …すると昔見た家庭の医学だか何かのテレビ映像が頭の中で流れ出す。「初めはただの貧血だと思ってたんですよ…」と語る中年女性。だが何の病気の話だったか全く思い出せない。確か彼女は大きな手術をしたのだ。嫌だなあ、このまま半身不随や失語症になってしまったらどうしよう…22年間頑張ってきたのに…
 垂れていた上体を起こすとまた頭の血が急激に引いていくのを感じた。そうだ、あの女性は脳の血管が切れたんだった…頭を壁にもたれ、楽にならない胸のつまりを恨んだ。しばらくして、自分がうめき声を発しているのに気付いた。汗が噴き出してきた。暑さを感じないのに全身がびしょ濡れになった。いよいよ焦ってiPhoneを探り出し、母に迎えを頼んだ。汗を拭き、鏡を見るとまさに顔面蒼白だった。家族といるときならまだしもよりによって今日だなんて、こんな顔で友人と話せと言うのかと思いながら血の気のない顔にチークと口紅を強めに塗り、外へ出た。
 か弱い少女が美しいのは映画の中でだけで20代の人間が弱いのでは話にならないし、山登りをするような体力はないにしても気力・知力・体力の掛け値には自信があったので、意識がはっきりするにつれてなんだか気持ちが落ち込んでいった。

 「脳貧血だね」と運転席の母は言った。貧血という言葉をそのときまで全く、本当に全く思いつかなかった。吐き気や目眩などにやられると、自分が今どういう状態なのか、何をするべきなのかという判断ができなくなる。というより必要なことが何も思いつかなくなる。
 若い女性はよく貧血で倒れる。無理なダイエットが原因に挙げられることが多いが、私はダイエットをしたことがないのでその理由は疑わしい。高校生のとき、始業式や終業式の度に誰かがバタンと倒れていたし、そういえば私も中学生のとき製菓スクールで2時間以上立っていると倒れた(迷惑な生徒だ)。

 そんなわけで、この先街中でしゃがみこんでいる人を見かけたら必ず声をかけるようにしようと思った。私は明日血液検査を受けることになっている。