2014年5月21日水曜日

roses



私はバラが好きではなかった。

きっと多くの人が思い浮かべるバラは、「バラ」の香りというより「バラの香り」という香りをまとった存在なのではないかと思う。私にとってのバラもそういうもので、何せ好きな花は紫陽花やかすみ草なので、バラのあの香りの驕った感じが苦手だった。あまりに華美で、高飛車な花だと思っていた。


イスパハンという洋菓子をご存知だろうか。ピンク色のマカロンに、ライチの果肉とバラのクリーム、フランボワーズを挟み、バラの花びらをあしらったもので、ピエールエルメのスペシャリテだ。今年のバレンタインに、ラデュレがハート形のアントルメを作ったのも記憶に新しい。

これを初めて食べたのは高校生の時で、母と行った銀座三越のラデュレのティールームだった。
華やかなケーキだな、と思った。エディブルフラワーが今ほど流行っていなかったし、大きなバラの花びらを載せたマカロンは新鮮に感じた。私がその日このケーキを選んだのはフランボワーズとライチに惹かれたからで、なんだってわざわざバラの香りなんてつけるんだろうと思っていた。
しかしまあお察しの通り、このケーキは本当に美味しかった。今では好きな洋菓子を尋ねられたら必ずイスパハンと答えるほど、私はこのケーキが好きになった。

そして私はその時バラを好きになった。
生花の香りをかぐのではなく、口にするという行為は、それを体全体で受け入れるような、そんな意味を持たせたように思う。
そうなると不思議と花それ自体も愛らしく感じられるもので、高飛車だと感じていたあの美しい花は高貴で上品だと思うようになった。ちなみにバラの花言葉は「愛」や「気まぐれな美しさ」だそうな。色によってまた様々だけれど。

私はガーデニングには詳しくないが、バラは最も栽培が難しく最も奥深い花のひとつだと思っている。多くの人たちが夢中になるのもよく分かる。
間もなくバラの季節だ。今年はどこかの庭園へ、時間を作って行きたいと思う。


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