2014年3月1日土曜日

ぐりとぐら展



松屋銀座で開催されている「誕生50周年記念 ぐりとぐら展」を見に行きました。

『ぐりとぐら』は私の大好きな絵本ベスト3には入る絵本で(ちなみに他はバムケロシリーズと『うさぎのくれたバレエシューズ』)、小さい頃眠る前に母によく読んでもらっていた記憶があります。

展覧会にはかなりの数の原画と初版本などが展示されているのですが、どれもその状態の良さに驚かされました。とても大切に保存してあったのだということが伝わってきます。
すこしアミューズメント的な空間構造になっていて、子どもたちがとても楽しそうでした。

50年前にはもちろん今のようなデジタル原稿はありませんから、ぐりとぐらは全て絵の具(特に記載はなかったけれどポスターカラーのように見えました)で描かれています。
原画を見て意外に思ったのは、塗りもざっくりしていて、大胆にホワイトを入れたり失敗したところに別の紙を重ねたりしているのだということでした。まるで迷いながら描いているような。私の周りには下絵が出来上がったら変更はしない人が多いので、こういう描き方も出来るのだなあと思いました。原画をそのまま出さず、印刷を前提としている故かもしれませんね。

物語を書いている中川さんは保育士をなさっていて、『ぐりとぐら』がどうして生まれたのか語る中で「私は若い子が大好きでね、その子たちを一番可愛い状態にして見られるのがこの仕事の醍醐味だと思いますよ」と言っていたのが印象に残っています。たくさんの子どもたちを育ててきた、本物の母性だなあと。

『ぐりとぐら』と言えば、誰しも一度はあのふわふわのカステラに憧れたことでしょう。
絵が写実的とか、そういうのではなくて、とにかく美味しそうなのですよね。ぐりとぐらが紐でくくって運んだ大きなたまごから出来上がる、黄金色のカステラ。たくさんの人が再現レシピを考案していますが、やっぱりあのカステラにはたどり着けません。
なぜって、これが絵本だからですよね。薄力粉がどうとか焼き時間がどうとかそういうのを全部飛び越えて、私たちにただ理想的な、あまりに強力な「美味しそう」という印象をぶつけてきているからなのだと思います。
(ちなみに私は宮崎駿監督作品に出てくる食べ物にもよく同じ印象を受けます。『ハウルの動く城』で城に入ったばかりのソフィーがハウルやマルクルと食べる朝食の目玉焼きとベーコン、『千と千尋の神隠し』でハクが千尋に食べさせるおにぎりとか。)

『ぐりとぐら』シリーズは七冊の絵本とかるたが出版されています。私は一冊目の『ぐりとぐら』しか特に覚えていなかったのに、驚いたことに原画を見ていたら全て思い出したのです。それも、母に絵本を読んでもらっている場面まではっきりと。
母は幼い私たちに「八時までにお布団に入ったら絵本を読んであげる」と約束していて、毎晩私と弟でそれぞれ好きな絵本を持って布団に飛び込んだものでした。きっとこの時間に『ぐりとぐら』シリーズも何度も読んでもらったのだろうと思います。しかも子どもなんて大人しく話を聞いているわけもなく、「それはこの方がいいのにねえ」とか「すみっこにうさぎがいる」とかいろいろ言うので全然話が進まないのです。毎日私たちが何冊も絵本をリクエストするので、「もう疲れちゃったよ」と母が言うと「じゃあ私がお話ししてあげる!」と私がその絵本のキャラクターで創作ストーリーを作って語っていたとかなんとか。

自分がこうして絵本を見て当時のことを思い出せたということはやはりとても嬉しかったのです。あんな幼い子どもに毎晩延々と読み聞かせをさせられた母の労力は決して無駄ではなかったのですね。笑

きっと私も自分の子どもにたくさんの絵本を読み、その中には『ぐりとぐら』も含まれているのでしょう。



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