2014年7月14日月曜日

オルセー美術館展 印象派の誕生─描くことの自由─





国立新美術館で開催中の、オルセー美術館展へ行った。
展覧会が始まって初めての土曜日であったため人は多かったが、入場制限がかかるほどではなかった。私は普段美術館へは平日に行くことにしていたので、土曜のように多様な人々と展覧会をともにするのも悪くないな、と思った。一緒に行った人でなくとも、他の人が口々に語り合う感想を聞いているのは楽しい。

1874年にパリで第一回印象派展が開催されてから140年。19世紀フランスを中心とした充実のコレクションを誇るオルセー美術館から、84点が六本木へやってきた。同時開催中の「バレエ・リュス展」はクセが強いと専らの評判だが、これは反対に、マネやモネなど日本人にも親しみやすい展覧会なのではないかと思う。

展覧会は全部で9章から成る。
散々ポスターに用いられた《笛を吹く少年》や《ピアノを弾くマネ夫人》といった「新しい絵画」としてのマネに始まり、その後はレアリスムや宗教的な歴史画、裸婦像、静物など描写対象ごとにテーマが分けられる。最後は「円熟期のマネ」であり、《ロシュフォールの逃亡》が私たちを見送る。

国立新美術館の以前の展覧会でいえば、一昨年(検索してあれがもう二年前だということに愕然としている…)の「大エルミタージュ展」ほどのボリューム感はないが、分かりやすくすっきりと気持ちのいい展覧会だった。「お行儀が良い」と言えば適切だろうか。


マネの《笛を吹く少年》は今回、この展覧会のポスター、図録の表紙だけでなく様々な展覧会グッズに用いられた。その理由がなんとなく分かったように思う。使いやすく親しみやすいのだ。背景は濃淡の織り混ざるグレー、その中に立つ少年は黒いジャケットと朱色のズボンを身にまとう。その色の塗り方は平面的で、例えば写真館で記念写真を撮ったような、これがアニメーションだったら、少年だけセル画で描かれているような、そんな印象を与える。つまり、人々は躊躇うことなく少年を背景から切り取ることができる。とてもキャラクターらしい。

私は展覧会へ行くといつも気に入った絵のポストカードを買うことにしており、今回はモネの《アルジャントゥイユの船着場》とシスレーの《洪水のなかの小舟、ポール=マルリー》を連れて帰った。一緒に行った人がそれを見て「こういう風景画ってポストカードにとても向いているよね」と言った。確かにその通りで、もったりとした雲や突抜けるブルー、明るい日差しはこのサイズと印刷物にぴったりだ。

絵は額に入れられて飾られているだけでなく、こうして我々の生活の中へ溶け込む。きっと、マネもシスレーも予想しなかった形で。
そんな中で、絵と直接出会ったときに目にしたあの筆跡を、あの質感を忘れずにいられたら、とても素敵なことだと思う。


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