2013年12月3日火曜日




晩年のJ・M・W・ターナーは、当時発明されたばかりだったクロームイエローの絵の具を多用した。批評家たちから「黄熱にかかっている」などと揶揄されながらも、彼はそのイエローに魅了されていた──

クロームイエロー。
私が高校時代に最もよく使った絵の具です。確か#FFCB05、ニッカーのポスターカラーの26番で、山吹色を少し明るくしたような黄色。
冒頭は先日、現在東京美術館で行なわれているターナー展で見た解説文の一節で、それまで展示会の絵をのんびりと眺めていた私を、突然に過去へ引き戻すものでした。

私は高校時代、美術部に所属していました。
他の代と違って美術進路をとる部員のいなかった私たちの学年は、毎週雑談をしながらのんびりと好きなものを描いたり作ったりしていました。その中で私はポスターカラーを使ってキャラクターチックなうさぎやくまを気の向くままに描いており、他の絵の具の倍以上は使ったであろうかと思われるのがクロームイエローなのです。
私はこの黄色がとても好きでした。単独で用いるのはもちろん、他の絵の具との相性がとても良かったのです。ビリジャンと混ぜるもよし、カーマインと混ぜるもよし、3色目としても有能だし、ホワイトと混ぜれば柔らかくて愛らしい黄色を作ることができます。

残念なことに私は高校を卒業して以来ほとんど絵を描いておらず、したがって絵の具にも触れてきませんでした。この愛すべき黄色の名前も長らく忘れていたのでしょう。しかし、期せずして、上野で、2年以上前の記憶を勢い良く流れ出させる文章に出会ったのです。何かがきっかけで過去の出来事が急に思い出されるという経験はおそらく多くの人がお持ちでしょう。私もこれまで匂いや音で過去に引き戻される経験は何度もしてきましたが、単語一つで記憶が溢れ出すのは初めてでした。新しい感覚を得た気分でした。それも、19世紀の偉大な風景画家が愛用していた絵の具だなんて!私はとても嬉しくなって、展示会の絵をもう一度ぐるりと眺め、その中にクロームイエローの存在を確かめると、明るい気持ちで帰路につきました。

久しぶりに絵の具箱を開けてみると、あの黄色は当時のまま、お行儀良く整列しています。さて、久しぶりに、彼らを連れてどこかへ出かけましょうか。

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