2013年12月10日火曜日





箱根に行きました。
行き先はポーラ美術館と大涌谷だけ決めて、あとは適宜ぷらぷらしようというのんびりした計画で出かけました。ロマンスカーで新宿から箱根湯本まで一時間半。信じられないくらい近い。箱根登山鉄道で強羅まで40分。とても急なこう配を走るので、三回のスイッチバックがあります。最盛期は過ぎたもののやはり紅葉が美しく、40分もあっという間です。

ポーラ美術館へは「ルノワール礼賛─ルノワールの20世紀の画家たち」という企画展を見に行きました。ポーラ美術館には初めて行ったのですが、絵画への説明書きが丁寧で優しいですね。史実を順々に並べて行くような堅い説明ではなく、ルノワールが好きなのだろうなと感じさせる暖かい文章でした。そして、芸術は大衆に開かれていなければならないのだと考えているのではないかな。
ルノワールは色の重ね方によって重厚な印象を作り出し、丸みのある柔らかな美しさを描くのに長けた人だと改めて感じることができました。企画展の冒頭に飾られた1890年頃の「アネモネ Anemones」がまず静物画の枠を超えたインパクトを与えるのですが、その後他の画家たちによる花の作品を含めることでルノワールの描く花や花瓶の特徴的な美しさ(写実性ではなくて、結局のところ曲線美なのではないかと思います)を明瞭なものにしています。

彼はピエール・ボナールにこんな言葉を残しています。
「美しく描かなければならない、そう思わないか、ボナール」

なんだかとても私たちに親しみを感じさせませんか。彼には世界が特別「美しく見えていたからそのまま描いた」のではなく、美しく描こうという気持ちがあったからこそ、「美しく」描いていたのだと。私はこの言葉を聞いてからルノワールのことが一層好きになりました。


さて、一度強羅へ戻り、ケーブルカーとロープウェイで大涌谷へ向かいます。
久しぶりに地形を見て衝撃を受けました。ロープウェイは、箱根の美しい山々を見ながらしばらく進み、ひとつ山を越えると突然大涌谷の荒々しい景色に激変するという粋な経路をたどります。切り開かれた山から温泉の湯気がもくもくと立ちのぼり、析出した硫黄によって地面は黄色くなっているのです。そしてその規模が尋常ではなく、圧倒的な威圧感と爽快なまでに突き抜けた開放感を感じさせます。
笑ってしまうほど寒いし硫黄臭かったのですが、それを超える爽快感でとても気持ちがよかったです。そういえば、駅の焼き芋の売店にロシア語の説明がついていました。



сладкая картошка、甘いじゃがいも…たぶんロシアにさつまいもはないので仕方ないですね。вкусныйとсладкийの格変化、ロシア人観光客に訂正されたんでしょうか。それを想像するとちょっと面白いです。

大涌谷を出るとだいぶ日も暮れてきたので箱根湯本へ戻り、足湯に浸かってのんびりしました。平日だし、シーズンでもないので六時過ぎには街全体が真っ暗です。それがあるべき街の姿なのかもしれません。

都心から離れたところでのんびりできて、とても楽しい一日でした。
暖かくなったらまた行きたいなあ。


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